人口を約2万人以上増加させた千葉県流山市のマーケティングとは?

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人口を約2万人増加させた千葉県流山市のマーケティングとは?

「都心から一番近い森のまち」を謳う千葉県の流山市は、千葉県内では第8位の人口約20万人が住む中堅都市です。

その流山市が、今全国の行政からちょっとした注目を集めているそうです。

その理由は、ここ10年で約2万人もの人口が増加したこと。

地方都市の多くが人口減少という問題を抱える中、流山市の人口増加は、非常に稀有で、新たな行政運営の指針になる可能性があるようなのです。

 

10年前に組織されたマーケティング課の存在

地方都市の人口減少はどこも大きな問題ですが、流山市も例外ではなく、人口増加への取り組みは、重点課題の一つでした。

外部からの移住を促進するにしても、流山市にはシンボリックな観光施設もなければ、有名な物産品もない住宅都市。

しいて言うなら東京都心から20~30キロという近い圏内に位置し、それが「都心から一番近い森の街」というキャッチフレーズのいわれになっています。

そんな流山市が人口増加に向けて行なった対策が、「地域マーケティングの導入」です。

当時の地方行政では珍しい「マーケティング課」を新設し、広報を含めて発信力を強めるとともに、魅力的なコンテンツの創造に取り組むようになったのです。

 

マーケティング戦略「AIDAの法則」

新設されたマーケティング課の最初の大きな目的は、「子育て世代・共働き世代の定住人口増加促進」です。

そこでマーケティング課がとった行動は、以下のような戦略です。

まず、人が新しく住居を決めるまでに4つのステップがあると想定。

  • 第1のステップは、広告などで流山市の存在自体を認知してもらうということ。
  • 第2のステップは、実際に街を訪れてもらい、どんな街か肌で感じ知ってもらうということ。
  • さらに第3のステップでは、この街のファンになってもらうこと
  • そして第4のステップで、実際に「住む」という決断をしてもらうこと。

これらそれぞれの段階で、その時に応じた企画を展開していったのだそうです。

この4つのステップを策としたことこそ、マーケティングでよく使われる「AIDAの法則」を取り入れたものだと思われます。

AIDAの法則とは・・・

消費者の購買プロセスを示す有名なフレームワーク「AIDMAの法則」の元になるもので、すべての消費行動フレームワークの元祖にあたる基本的な考え方。[AIDMA」の「M=memory」を除いた要素。

【AIDAにおける消費行動プロセス】

Attention(認知する):商品の存在を広告などで知る

Interest(興味をもつ):期待し、さらに商品に興味をもつ

Desire(欲しいと感じる):商品の機能や特徴を認識し、欲しいと思う

Action(購入する):商品を購入する

流山市の人口増加プロセスは、まさに「AIDAの法則」に準じたものになっていると考えられませんか?!

また、子育て世代へのプロモーションとして、「送迎保育ステーション」を設置。

送迎保育ステーションとは、「流山おおたかの森駅」と直結し、園児が一度も外に出ることなくバスで送迎できるシステムで、親にとっても安心して子供を預けられると人気の企画になっています。

また、駅の南口の駅前広場は、人々が交流できる場所として設計されていて、様々なイベントが開催されています。

流山おおたかの森駅

 

行政に必要とされる“経営の視点”

見事人口増加の目標を達成しているマーケティング課ですが、喜んでばかりはいられないそうで、子育て世代の増加により保育園の待機児童が増加するなど、新たな問題も出てきているようです。

また、外向きの宣伝だけに偏らず、流山市に住む人々へのサポートを通じて市民の満足度を高めるという使命もあるようです。

ただ、多くの市民サービスを維持するためには、若年層で共働き世帯の人口流入が流山市の経営にとって大きな源になるため、市長は「自治体には経営の視点が必要だ」と常々話されているようです。

 

ただ、経営の視点からいえば、マーケティングの成果も厳しく問われることになります。

人口動態のように数値に表せることができるものはよいですが、数値に現れないものもたくさんあります。

“経営の視点”を持つということは、従来の与えられた予算を使うという行政的感覚から、費用対効果、結果を意識した運営が必要になってきますね。

 

もしも、市が1つの民間企業だったら?

もしも、市が1つの民間企業だったら?

ここに流山市に移住してきた関西出身の手塚順子さんの著書があります。

この本は、「行政も“経営の視点”を持つべき」という事とリンクしているかのようで、たいへん興味深い内容の本になっています。

筆者の手塚さんは流山市に移住し、育児休暇中に思いついた妄想を活字にして本を出版されました。

 

手塚順子さん

著者:手塚順子さん


本のタイトルは『もしわたしが「株式会社流山市」の人事部長だったら』(2020年12月15日発売)

手塚さんは、育児休暇中に同じ育休中の女性や定年退職された人など、日中に街にいる人たちが活躍する場所や機会がつくれたら、この流山市はもっともっと良くなるのではないか?と考え、

流山市は株式会社、市長が経営者、市民が従業員で、自分が人事部長だったらどんな人材育成・人材配置をしたら街の課題を解決していけるのか・・・

行政、学校、企業、そして読者を動かしていくといった内容になっています。

世の中に大きな変化が起こり、地方のコミュニティースペース、オンラインでできること、できないことなどコミュニティの可能性について考える本になっています。

 

行政と個人の考えが一致した例

流山市の行政、とりわけマーケティング課のもう一つの目標として市のブランディングを上げています。

最近では流山市のママさんたちとつながる活動を増やし、彼女たちと共にこの街を盛り上げブランディングしていくという気運が高まっているのだそうです。

同じく、手塚さんもこの街のすばらしさを個人から派生させ、流山市のすばらしさを広く伝えています。

手塚さんのように自分の住む街、暮らしたい街でアイデアをひらめき、行動に移す市民が続くことが、流山市が本格的に変わってきた証拠であり、全国から注目を集めているという事ではないでしょうか。

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