この記事のもくじ
F1層〜M3層の顧客分析からさらに具体化した手法がペルソナ
くまざわです。
販売促進も含めて広告や広報においてメディアの選出やデザインなどの制作にかかわる時、訴求相手を絞って戦略を練り上げていきます。
そこで重要なのが、「誰を対象にするか?」。
いわゆるターゲットの設定というのを行います。
どういう層に訴えたいのか?ということですね。
ある商品があるとして、それを買ってくれて使ってくれるのはどういった人たちなのかを想定するわけです。
「やはり、M2層やF2層をターゲットにして・・・」とか
「女性ならF3層までひろげるべき・・・」とか言いながら
想定した購買見込み客であろう人達に訴求するには、どんなメディアが適切なのか、どういったデザインが好まれるのかなどを考えていくわけです。
もちろん、そこには費用対効果も含めて、戦略が練られていきます。
そんなターゲティングの話しになるのですが、近頃(というかだいぶ前かららしいが・・・)ちょっと変わってきてるんです。
「それで、ターゲットは?」
よく会議で聞かれた言葉ですが、最近ではあまり聞かれず、かわりに
「それで、ペルソナは?」
となるのだそうです。
ターゲットと言っていたのが今では「ペルソナ(persona)」という言葉に変わっています
MF層分析のターゲットからペルソナへ
ターゲットはマーケティングで頻繁に使われてきた言葉で、代表的な選定手法として男女を年齢別に区分けするなどして、その特性を調べる方法になります。
マーケティング用語でおなじみの“ターゲット”
今でもテレビやラジオなど電波メディア業界では定番で
C層 | Child,Kids | 男女4歳〜12歳 |
T層 | Teen | 男女13歳〜19歳 |
M1層 | Male-1 | 20歳〜34歳の男性 |
M2層 | Male-2 | 35歳〜49歳の男性 |
M3層 | Male-3 | 50歳以上の男性 |
F1層 | Female-1 | 20歳〜34歳の女性 |
F2層 | Female-2 | 35歳〜49歳の女性 |
F3層 | Female-3 | 50歳以上の歳の女性 |
このように年齢別に区分けして
「M層とかF層に向けた番組制作で・・・」という言葉が飛び交っています。
2000年ごろから使い始めた“ペルソナ”
一方、「ペルソナ」ですが、今さらというお言葉は重々承知のうえ、あえてどういった言葉・意味なのか、ターゲットと何が違うのか?を記してみましょう。
ターゲットといえば言葉を聞いただけで誰でも何となく想像がつきますが、ペルソナというと、「んっ??」と思われた方もあったでしょう。
もともと、ペルソナ(persona)は古典劇でよく使われていた「仮面」を意味する言葉。
その仮面がどうマーケティング用語になったのかというと、心理学者のユングが「人間の外的側面」の概念をペルソナと呼んだことからだそうです。
そのユングの言う「人間の外的側面」=「仮面」が、マーケティングでは
「企業が提供する製品・サービスにとって最も重要で象徴的なユーザーモデル」
として使われるようになったそうです。
背景にはMicrosoftのジョン・S.プルーイットによる
『ペルソナ戦略~マーケティング、製品開発、デザインを顧客志向にする』
が刊行されたのがきっかけになりました。
この本のマーケティング手法が各界で注目を集め、マイクロソフトはもちろんの事、アマゾンやフェデックス、フォードなどの大企業に広まったのが最初だといわれています。
ターゲットとペルソナ、どこが違う?
マーケティングでターゲットとペルソナ、どちらも商品やサービスを提供するにあたって対象とする想定ユーザーのことですが、いったいどう違うのでしょう。
一般的には、ターゲットの設定(ターゲティング)は、氏名、年齢、性別、居住地、職業、勤務先、年収、家族構成といった定量的なデータをピックアップしてユーザーを想定するのに使われてきた言葉です。
それに対してペルソナは、ターゲットをさらに掘り下げて、想定するユーザーの生い立ちから現在までの経緯、状態、さらに身体的特徴や性格、その人のライフスタイルや価値観、趣味嗜好や消費行動などを定量データに加えて分析し、ユーザーを想定するというもの。
つまり、想定ユーザーを限りなく具体的に絞り込んで、人物像を丸裸にして設定するということですね。
例えば従来からあるターゲティングでは
〇ターゲット設定
男性:山田 学
年齢:38歳 M2層
職業:会社員
趣味:スポーツ
と幅を持たせた設定になります。一方でペルソナは
〇ペルソナ
男性:山田 学
年齢:38歳 M2層 見た目より若く見え、服装も若者志向より
職業:会社員 電力関係 残業週2日程度、仕事帰りに週1日居酒屋へ
趣味:スポーツ スキーは2級の腕前 最近テニスを始めた
嗜好:お酒(焼酎)、観劇(ミュージカル・妻の影響)
家族:妻と二人の娘 娘のクラブ活動(ダンス)観戦が楽しみ
など、かなりユーザーを細分化して、あたかも実在する人物がイメージできるところまで考えこんで設定したのがペルソナとなります。
(A)「中年サラリーマンのためのスポーツクラブ入会募集」
(B)「残業帰りのお父さん、家族も一緒に利用できるスポーツクラブ入会募集」
広告の表現も(B)のように具体的に訴求する方が印象に残りますよね。
ペルソナの設定の意義
企業の商品開発や営業、広告宣伝等において、その対象を設定することはとても重要なことです。
企業内の部署が違うと、想定ユーザーがまちまちになったり、それぞれが勝手なイメージを持ったまま進んでしまったり。
想定ユーザーがぼやけてしまっては、社内で共通認識を持つということも大変です。
各部門で少し違った認識を持ちながら商品開発や営業活動を進めてしまうと、結果、ユーザーの満足を得ることができない商品となってしまいます。
広告宣伝や販売促進でいうと、広告表現や店頭でのイメージ・印象がバラバラになって、企業側が訴求したいものがお客様に違ったイメージで伝わってしまうことになりかねません。
そうならないためにも想定ユーザーを社内で共有し、誰もが同じイメージを頭で描けるように具体的にユーザー設定をする「ペルソナ」が必要になってきたのです。
ペルソナを設定するメリットとは
ペルソナを設定することで精度の高い想定ユーザーを共有できるため、様々な局面で総じて効率的に作業が進むようになります。
1. 一人の想定ユーザーを徹底的に分析することで、ユーザーの実態が理解でき、高い精度で訴求対象の求めるものを開発・制作できる。
2. 「思い込み」や「担当者間の認識のズレ」を防ぎ、無駄な作業が無くなり効率的な作業でスケジュールも組みやすくなる。
3. 計画が明確になることで、効率よく時間・コストの削減も可能になる。
他にも、ペルソナの設定によるメリットは多く、プロジェクトのチーム間のコミュニケーションもスムーズになります。
つまりペルソナは企業のマーケティング活動において根幹となる部分だと言えるでしょう。
これらのメリットを受けるためにも、ペルソナ設定は非常に重要な位置づけにあります。
ここで知恵を出し合い、精度の高い想定ユーザーをつくらないと、精度の低い設定では、いざ蓋を開けたときに「あれ?おかしいぞっ!」ということになってしまいます。
ペルソナに様々なマーケティング分析を加え精度を高める
ペルソナ設定をするには、上記で述べたようにできる限り具体的な人物像をイメージできるようにとことん掘り下げて精度を高める必要があります。
そのために、他のマーケティング分析をクロスさせたりして、完成度を高めていきます。
マーケティングにおける有名な分析手法だと、
●3C分析・・・商品やサービスを展開する環境を分析するためのフレームワークです。
「顧客(customer)」
「競合(competitor)」
「自社(company)」
頭の文字をとって「3C分析」と呼ばれ、特に「顧客(customer)」ではペルソナ設定が重要ポイントとなります。
●STP分析・・・顧客の絞り込みを行うのに役立ちます。
「セグメンテーション(Segmentation)」
「ターゲティング(Targeting)」
「ポジショニング(Positioning)」
頭文字をとって「STP分析」と呼ばれます。
3つの切り口を活用し、ターゲットを絞り込んで最適な顧客を見つけ出します。
この分析を行いさらにペルソナを想定することで精度を高めます。
●4P分析・・・基本的なマーケティング内容を決める分析方法です。
「製品(product)」
「価格(Price)」
「流通(Place)」
「販売促進・広告宣伝(Promotion)」
これら4Pとペルソナを組み合わせて顧客獲得につながる戦略を組み立てます。
この他にも色々な分析方法がありますが、提供する商品やサービスによってそれらを使い分けることになりますが、どれもペルソナの分析が必要となりますね。
ターゲットからペルソナへ・まとめ
ターゲティングとペルソナ、ターゲティングからペルソナと顧客獲得、売上向上のためのマーケティング戦略は時代とともに進化しています。
ちょっと油断していたら、新しい手法や言葉がどんどん出てきますね。
今後はさらにAIが普及し、一層細かく確実性の高いマーケティング戦略・戦術が登場してくることでしょう。
私、くまざわの仕事の範疇においては、モロに影響され勉強を怠ってはすぐに市場についていけなくなってしまいます。
街角で見かける看板やポスター、テレビやYoutubeでみるコマーシャルフィルム、新聞・雑誌の広告など、「ペルソナはどう設定されているのかなぁ」などと考えながら見ていかなければと思います。