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話題の啓発ポスター2種、人生会議とタバコゼロ・ミッション
どうも!くまざわです。
行政が積極的に作っている啓発ポスターというのがあります。
各省庁はもちろん、各都道府県や市町村などが色々なテーマをもとに、社会に訴求したり問いかけたり。
ちょうど今、話題になっているのが厚生労働省が吉本興業に発注した「人生会議」をテーマに掲げた啓発ポスター。
内容と予算にクレームが付きお蔵入りとなったわけですが・・・どうなんでしょうね。
このてのテーマはなかなか難しいですからね。
同じ作り手の立場側としてあえて言わせてもらうなら、相当な知恵をしぼって人々の興味を引くものができたのではないかと思うのですが・・・。
ビジュアルとコピーで人々に興味を持ってもらう、見た人の心を動かすのが啓発ポスターの役目です。
そして、啓発ポスターを見たことによって、次のアクションにつなげるという一連の広告戦術が背景に備わっています。
啓発ポスター単体だけでなく広告宣伝計画全体がパアになったのは、時間とお金がもったいないものですね。
しかも、企画から制作費まで全て税金ですからなおさらです。
あれこれ論調はあると思いますが「人生会議」というのを広めたという意味では、良くも悪くもこれだけマスコミで取り上げられれば、ある意味目的の一部は達成されたのかも知れませんね。
同じ啓発ポスターで今年話題になった啓発ポスターがもう一つあります。
喫煙者だけでなく、非喫煙者も驚くショッキングなデザイン
日本対がん協会が作っている啓発ポスターが強烈な印象で話題を集めました。
日本対がん協会は、がん予防の活動の中心に「禁煙推進」を置いていて、毎年タバコの有害性を啓発ポスター等で訴えています。
そのがん予防をテーマにした今年の啓発ポスターが強烈な印象を与え、喫煙者だけでなく非喫煙者までも驚いたひじょうにショッキングな描写で表現されています。
それがこの啓発ポスターです。
ポスターが訴える「健康だけでなく、様々なものを吸われてしまう」
ポスターのメッセージ「吸われているのは、人間です」というコピーがひじょうに印象的です。
スーツ姿の男性がタバコを吸っているのですが、反対にタバコに顔が吸い込まれてしまい、そこからドクロ型の煙が立ち昇っていますね。
見た目、本当に異様な、ちょっと気色悪い印象を受けるヴィジュアルですね。
背景が黒というのも気味悪さを増幅しているようです。
このポスターに込められているメッセージには次のことが込められているのだそうです。
「タバコは健康面と共に経済的な被害をも生み出し、多くのものを失ってしまう。」
「新型タバコも含めて、タバコは吸っているつもりでも実は人間の方が吸われていて多くのものを失っているという事を感じとってもらいたい。」
確かに、全て持っていかれてしまうというのが伝わってきますね。
協会によると、今年のこの啓発ポスターは過去一番の反響があったそうです。
禁煙推進ポスターは秀作揃い?
日本対がん協会の禁煙推進ポスターは、今年に限らず秀作揃いです。
ポスターを見たことで、禁煙を真剣に考えさせられた人も多くいる事でしょう。
なかでも過去、最も反響があったポスターとされるのが2013年の啓発ポスター。
それがこれです。
「たばこ1本で、寿命は5分30秒縮む」というキャッチコピーで、煙が死神になるという作品。
これも目にした人は多いと思います。
1本で5分30秒縮むということは、一箱20本吸っちゃうと110分縮みます。
約2時間です。
1日1箱で約2時間の命が削られていくのはショックですね。
1ヶ月だと約60時間。
2日と半日寿命が削られていきます。
しかも一箱500円として15,000円。
1ヶ月に15,000円使って2日と半日、命を縮めているという計算です。
このコピーが優れているところは、こういう寿命の話しになって、さらに拡散されるというところです。
奥さんがポスターを見て、旦那さんに「あなた、今日も2時間命少なくなっていますよ」とか絶対言うはずです。
このように強烈に印象に残るポスターですが、まだまだ秀作があります。
2016年のポスターはタバコの焦げ跡が肺の形を作る・・・
「吸うほどに、蝕まれていく」。
2017年は
「まとわりつく。つきまとう。逃げられない。喫煙リスク」
と、毎年衝撃的なデザイン&コピーが揃っています。
ポスター発注側と制作側の意思統一から秀作が生まれる
毎年これだけ優れたデザインとコピーを生み出す背景には、日本対がん協会側から投げられる材料が精査されていて、制作側もその課題に応えられる限りの知恵・労力をもって取り組んでおられるのだと思います。
禁煙推進というテーマも、どちらかというと難しいテーマで表現などもボーダーラインなどがあるのかも知れません。
しかし、これだけ攻めている、インパクトのあるデザインを毎年続けられるのは、発注側と制作側のコミュニケーションが相当しっかり取れている証拠だと思います。
啓発ポスターの使命は印象に残るインパクトがないとメッセージは伝わりません。
しかも、そのデザインやコピーをしっかりと説明できる裏付けがないと成り立ちません。
日本対がん協会は、1958年の設立以来「がんで苦しむ人や悲しむ人を1人でも減らす」ことを目標に、がん検診の推進・がん患者や家族のサポート・正しいがん知識の普及啓発などの活動を行っている団体です。
その中で取り組んでいるのが、「タバコゼロ・ミッション」。
「タバコはがんの予防可能な最大の原因で、治療(手術、化学療法、放射線療法)のリスクも高めるもの」なのだそうです。
そのタバコゼロ・ミッションから発せられるのが禁煙推進の啓発ポスターシリーズです。
今後もその衝撃的で印象的な啓発ポスターに興味しんしんです。
そんなことを考えると、批判を受けたポスターは表面的な受けを狙いすぎていたのかも知れませんね。